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Ink Spots [Screamin' Jay Hawkins]


なんだ、これはブルースじゃないや
と当時のブルース少年は思ったのですが、2曲目に入っていた曲で急にシンガーが「フゴッフゴッ!ハベランフガッ!ンゴンゴッガッ!」と謎の「フゴフゴ音」を発し始めて、僕はその時初めて「マズイ世界に踏み入ってしまった」と思ったものです。

中にはガツンとくるソウル曲もあるのですが、忘れかけた時にフゴフゴ音が入るし、何やったら唾を吐きかけるような音も入っていて「しもた、ゲテモノや」と思い、なけなしの金で買ったCDがハズレだったことに怒りをぶつける場所も見つからず、なんとも言えない虚しい気持ちになりました。
でも当時からも今でも、僕はCDを売ることをしないので、目をやるとスクリーミンのCDは僕の「ブルースコーナー」にあるのです。

 

ある日、何となく改めて聞きなおしてみるとこれがなかなか気持ちいい音楽で、少しは知識の付いてきた僕はそのフゴフゴや唾ペッペッが1つのキャラクターとして成立してて、衣装の奇抜さも黒人エンターテイナーの手法として納得できるようになっていたのです。

 

そうなればスクリーミンの音楽は他の誰もやらない方法でのソウルとして楽しめるようになり、何やったらかなり好みな音楽になってきました。

インターネットのアレがアレしてきた頃にスクリーミンの映像を見たら、ライブの始まりに棺桶から出てきたのも「おおっ…!!」と楽しめたものです。
ある種バカバカしいとも思うのですが、KISSがやっていることも、マリリン・マンソンがやっていることも、スクリーミンと何も違わず同じような目線でのエンターテイメントなのです。
しかもこの人のバラードもメチャクチャ良いです。歌もシャウトも、抜群に上手い、その上に演出で飽きさせない歌手なので、このポップさは堪らないです。

代表曲「I Put Spell On You」もイカしてます。

 

単純に楽しいシンガーとして、一度聴いてみてはいかがでしょう。
多分、この人のステージを生で見られたとしたら、シャウトにつられて自分も心の底から湧き上がる何かを自動的に発することでしょう。
音楽は距離を置いて聴くものではなく、演者の発しているエネルギーにどれだけ近づけるかで、何倍も楽しいものになると気付けない人が多いと思います。

踊ったり叫んだりしてればそれでいいし、踊りたくなったり叫びたくなったりするような音楽を目の前で演奏するミュージシャンと出会えたら、それはすごく幸運なことですね!

おわり




oishiyuライター: 大石 悠
 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"MYM",他セッション、サポートでも活動中。

― 連載コラム:Ink Spots ~All about JAZZ I think~ ―
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