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Ink Spots [Sly Stone①]


こんにちは、なんがでっきょんな、大石です。

ブルース四方山話が続いてしまったので今回はダンスミュージックの話です。

もとい、ダンストゥザミュージックですね(ニッコリ)。

 

僕の大好きなアーティストの一人、スライ・ストーンですが、彼の目指した理想郷というか、時代を反映した音楽が大好きです。

スライは僕の中で大きく三つの時期に分類されているのですが

・ソウル~ミュージックパワー期
・鬱屈ファンク期
・以降カムバックしまくり期(現在まで)
となります。

スライはデビュー前、アメリカ西海岸のラジオDJをしていたのですが、スライのオーディエンスを楽しませるための娯楽性が磨かれたのはこの時期だと思います。
リスナーが求めるものと自分が提供するものがしっかりと把握でき、なおかつトーク力も自分のキャラクタも確立したDJ期を経て、満を持してのレコードデビューです。

しかも、人種差別、ベトナム戦争などの複雑な事情を持つ60年代中期、人気DJだったスライが結成したバンドは黒人と白人の混合メンバー、自分の兄弟や親戚と一緒というものです。
政治的なメッセージ、皮肉っぽい歌詞、そして何より音楽の持つ力で聴衆が楽しくなれるという普遍性を全面に打ち出したのです。黒人と白人が共に音楽で楽しめる、病んだアメリカの小さなステージから発せられるそのエネルギーで、バンドは本当にキラキラと輝いていたように見えたと思います。
それは今のように音楽が当たり前のような扱われ方ではなく、特別な瞬間として演出されたでしょう。

デビュー当時のバンドの写真を見ると、僕はすごく「クールだなぁ…」と感じます。それは、
「俺たちは他の奴等と違って、肌の色や人種なんか関係ない境地にいるぜ。最高だろ?」
と自信を持って言っているようにみえるからです。

「お前らみたいにつまらないことでいがみ合ったりなんかしないぜ」
当時のアメリカの持つ(人種差別という)憂鬱が溶け始めるきっかけのひとつだったでしょう。

スライ&ザ・ファミリーストーンのデビューに先駆けて、東海岸の宇宙人、ジミ・ヘンドリクスがイギリスでジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスとしてデビューし、黒人とイギリスの白人という構成は話題になります。

黒人だろうが白人だろうが、仲良くやれるという当たり前の考えが始まるのです。

「Dance To The Music」はヒットしました。
音の面でいうと、他の黒人グループや黒人シンガー、例えばジェームス・ブラウンやオーティス・レディングなどの音楽とは異質で、これはあくまでスライ&ザ・ファミリーストーンというバンドの音楽です。
さらに他のロックバンドとも全く違うエネルギーを持っています。

黒人のシンガー隊と白人ドラマーのビート感、ホーンセクションに世界初のスラップベース。それらがスライの作る曲を感動的に演出する上に、全員の音がひとつの固まりとして発せられている、音楽界の数少ない「奇跡」だと思います。

この曲では踊ることで心を解放するということを説いています。

…グレッグ、みんなドラマーを待ってるよ、ビートが必要なんだよ
俺がちょっとギターを足すよ、君らの足が動きやすいように
俺が低音を足すと、ダンサーは隠れてなんかいられないよ

というようにバンドが聴衆を踊らせていくことを歌と楽器で演出します。これほどハッピーなメッセージソングは他にあるでしょうか。

この曲、メインボーカルはスライの弟のフレディ・ストーン。フレディの歌は同年代のどのシンガーよりも伸びやかで音程もリズムも群を抜いて上手い。スライの荒いボーカルを完全に食っています。

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