facebook_icon.png twitter_icon.png

このGuitarを聴け![Wayne Krantz]


初めまして、こんにちは。ギタリストの小金丸 慧(こがねまる けい)と申します。
この度”この〇〇を聴け!”のコラムを書かせて頂ける事になり、大変喜んでおります。

早速本題ですがWayne Krantzというギタリストをご存知でしょうか。

 

「よく名前は耳にするけど…」「ちょっと気になってた」「ああちょっと意味分からない人ね」
「スレイヤー以外の音楽は聴いた事が無い」
などと、いろいろ意見はあることでしょう。
今回は皆様に少しでも彼の事を知って貰う、あわよくば好きになって頂けるように紹介していきたいと思います。

 

Wayne Krantzは1956年にアメリカ・オレゴン州コーバリス生まれ。1979年にバークリー音楽大学を卒業した後、様々なミュージシャンと共演。
意外と知られていないかもしれませんが、かの有名なバンド”Steely Dan”のツアーサポートも経験しています。ほかの共演者、共同作業者にChris Potter,David Binney,Tal Wilkenfeld,Keith Carlock等。
1990年には初リーダー作”Signals”を発表。

 

ではデビューした頃の演奏を見てみましょう。

 

これはLeni Stern Group(Mike Sternの奥さんです)のライブ映像。
当然の如く、今と初期のプレイスタイルはやはり違います。16分音符をフルピッキング弾き、まるでJohn Mclaughlinのようなスタイルでした。音色もその時代らしくコーラスのエフェクター、リバーブは深め。とてもウェットな音で演奏していました。
余談ですがこのライブで叩いているドラマーはZach Danzigerという方で、Wayneとの共演暦も長いです。
今現在もNYを中心に活躍しています。

私はDrummerもとても大好きなので是非とも聴いて頂きたい方です。下の動画では、先ほどの動画から1ミリも想像出来ないエクスペリメンタルなプレイが聴けます。最高。

 

では本線にもどり、Wayneの今現在のプレイを。

Youtube検索で”Wayne Krantz”と検索すれば1番上に出てくるであろう動画です。
音色が昔とまるで違いますね。基本はとってもドライな音で、効果的においしいとこだけ空間系エフェクトを使っています。必殺技のリングモジュレータサウンドも決めてます。
そして彼の今のプレイは「曲のテーマとソロの境界線をぼやかして、一曲もしくは数曲をまるで一つのセクション、モノとして捉える」ことに重きを置いていると私は思います。聴いているといつの間にかソロっぽくなったり、メインのテーマに戻ったりします。
しかも彼の演奏するフレーズは明らかにソロを弾いている、という風には聴こえず、ずっとリフを演奏しているかのような錯覚に陥いります。音のチョイスも開放弦を用いた広いインターバルな奏法や、ブルースペンタでベタに弾いたり、リングモジュレータエフェクターで音程感のないフレーズを弾いたりと、とても目まぐるしく展開します。

 

コンピングは今時のコンテンポラリーギタリスト然としない、よりギターらしいロックなコードリフで周りをプッシュする感じです。
さらにその境界線のぼやかしに効果的に働いているのが、ポリリズムであると私は思います。とにかくズラすズラす…基本的には4拍子上で16分音符を用いたプレイが多いようですが、

16分音符の、
 ・ 3つor6つ取り (3拍4連or6拍4連)
 ・ 5つ取り (5拍4連)
 ・ 7つ取り (7拍4連)
のフレーズ/リフを当たり前のようにこなし、それを正確なタイミングで着地しています。そこに屈強なリズム隊、ここではAri Hoenig(Ds/詳しい彼のプロフィールはライター秋元氏の記事を参照)、Anthony Tidd(Ba)が加わって最強のグルーヴを生んでいます。ズレにズレを重ねてもカオスにならないは演奏者一人一人の脳内4分音符が正確に同期しているからでしょう。
そうして正確無比なウネりグルーヴを継続することにより、小さいパワーが時間の経過とともにどんどん蓄積されて大きくなり、最終的には演奏者達が共有したテンションの到達点に着地し、一気に爆発します。

 

あ、それと映像の2:19~突然曲が変わったように聴こえますが、変わってます
なぜかThom Yorke(Radiohead)のソロプロジェクトの一曲、Black Swan(Album”The Eraser”)に切り替わります。本当になぜだか分かりませんがとりあえずカッコいいので深くは考えないようにしましょう。

next_logo



Comments