Ink Spots [Robert Johnson]
こんばんは。夏が気がつけば足元に広がっています。露に濡れたミドリの匂いが沈んだ空気に広がったこんな夜、あなたは何を聴きますか?
そう、ブルースですよね(ニッコリ)。
僕は中学生の頃からあるキッカケでブルースをたしなんでいるのですが、ある日ふと思ったのです。
そう、ブルースはまるで月のような存在だと。
もう脱線する準備は整っていますか?
僕はできてます。
例えば、音楽が宇宙のようなものだとすると、いま僕たちが普段耳にしているポップスは奇跡的な確率で生命が存在する地球、我々が理解できたことのほんのわずかな部分での音楽とは太陽系のようなものではないでしょうか。
月の影響を受けてこそ地球のあらゆる生命や状態があるといっていいと思います。
地球が誕生してわずかの時間が経った45億年前、巨大な隕石ティアが地球に衝突したそうです。その時にえぐりとられて宇宙に吹っ飛んだ固まりのひとつが月だといわれています。
放り出された月が地球の周りを廻り始めて以来、地球の引力との絶妙なバランスによって太陽系の軌道が安定し始めました。
いや、こんな話はどうでもいいですね。今回もブルースの話です。
皆さんはロバート・ジョンソンという人を知っていますか?
我らがブルースファンの中でも最も魅力的な存在、しかも我々の音楽にとっても最重要人物だと思います。
人物についても様々な文献で語られており、謎の多い生涯は数多くの伝説を生みました。
27歳で亡くなるまでに29曲(30曲とも)を録音し、その歌とギターは未だに我々ブルースファンを魅了し続けています。
有名な「クロスロード伝説」とは、ある日ロバートが十字路で悪魔に魂を売った引き換えに、超絶的なギターテクニックを得たというもので、僕自身はこの話はあくまで伝説であり「クロスロードブルース」という曲や、そのギター演奏技術から作られたイメージだと思っています。
この科学が発展した現代、悪魔なんてナンセンスですね!
だいたい悪魔や悪霊なんていう実態の無いものがこの世にあるわけがなく、全ては気のせいとプラズマで説明が…
脱線しかかりましたが、このロバートが「どこでどうやって」誰も弾けないようなギターを習得したかは解っていません。
エリック・クラプトンをして「ずっと二人で弾いていると思った。今でもどうやって弾いているか分からない」と言われたギター演奏ですが、一聴すると普通のデルタブルースのように聞こえるのですが、少しブルースギターが弾けるようになると謎が深まっていきます。
所謂ブルースの伴奏というのによく使われるサムピックというピックがあり、それを使ってギターの低音と高音を同時に鳴らすのがよく聞かれるブルースのスタイルです。
一人でリズムを刻みながらメロディも弾ける奏法はいまでもたくさんのミュージシャンに受け継がれています。
もとは西アフリカのバンジョールやンゴーニといった楽器(右指でポロポロと弦を弾く)がアメリカに伝わり、アフリカ系の黒人たちがギターでその奏法を使用したそうです。
ロバートも基本的にはサムピックを使いデルタマナーで録音していますが、左手の弦の押さえ方に何とも不可解な箇所が多いのです。
ひとことで言えば「同時に鳴るはずのない音が鳴っている瞬間がある」もっと簡単に言えば「無理がある」のです。
メロディは高い音が鳴っているのに、同時に低い音で伴奏している、そういう風に聴こえるところがあるのです。
僕が考え付いた結論のひとつは、ロバート・ジョンソンは何種類もの特殊なチューニング方を知っていたのではないか、というもので、一聴すると普通の調弦(レギュラーチューニング)で弾けそうなコードやフレーズなのですが、そうするとある瞬間で無理のある音が発生する。
これを最初からあるコードになるようなオープンチューニングにしたら解決するんじゃないかと思ったのです。
きっと音楽とは、想像できるよりももっとたくさんの発想によって作られてきたのではないでしょうか。