Ink Spots [James Brown]
この曲、なんて歌ってるんだろうと思ってよく耳をこらして英語を聞こうとしました(ちなみに、最近はiPodをシャッフルで聞いていて、普段ならぶち飛ばすような喋りだけのトラックやインタビューのトラックもじっくり聴くことにしています。そうすると、まるでスピード◯ーニングよりも効果があり段々英語が聞き取れるような気になってきました)。
よくよく聴くと、
(冒頭部分)
オトコのやつやっていいかな！？(やりなよ！やりなよ！)
勃起させたいぜ、セックスマシーンみたいにな！(いいぞ、やれやれ！)
おい、いくぞ！？(ええど、ええど！)
カウントしてええかな！？(やってやって！！)
1234！
てな感じです(便宜上Get upは勃起と訳しました)。
これって、歌詞じゃなくて、バンドへの指示ですよね。
その後もひたすらゲロッパと言ってはボビー・バードがゲローレと言う…なんじゃこりゃー！
勃て！(ゲローレ！)
セックスマシーンみてーに！！(ゲローレ！)
勃起不全の人の悩みの歌なのかな？と思う方もいるかもしれませんが、多分違います。
(より)勃て！
(より)セックスマシーンみてーに！
ということでしょう。だって勃起不全の男はそんなに熱くならないと思うからです。
しかもこの曲はこう続きます。
ブリッヂ(間奏)に行っていいか！？(おお！)
ブリッヂに行っていいか！？？(イエイ！イエイ！)
ブリッヂに！(行け行け！)
ここだっ！
そしてブリッヂ部分に変わります。
これってやっぱりただの指示ですよね？
JBの素晴らしさは、バンドに指示を出しているだけの大声が、とてつもなくグルーヴしているのです。
こんな人、後にも先にもいません。韻を踏むとか練られた歌詞とか必要なく、バンドに次の展開を指示してるだけで曲になっているのです。
あまつさえ、ファンキードラマーという曲では途中で
この曲は、ファンキードラマーという曲だ…
と呟くように喋り、多分まじでその場で曲名を決めたんちゃうかというのがあります。確かにこの曲はドラムが究極にファンキーで、これ以外ないほどぴったりなタイトルです。でも最初、何のつもりで録音を開始したのでしょうか…
僕の好きなJBの喋りに、バンドに向かって
俺が「やれ」と言ったら、やれ。
俺が「やめろ」と言ったら、やめろ。
「やれっ！！！！」
(瞬間的にバンドが爆発グルーヴする)
てのがあります。
バンドはJBの足、手、声、ダンスから目を離さず、いついかなる時も合図があるとすぐに反応して曲を展開させます。この完全な統制のとれた仕組みにナイジェリアのフェラ・クティは影響されたといいます。
確かにフェラの音楽も、フェラの合図に完璧にバンドが反応することであの鉄壁のグルーヴが生まれていると思います。
ただ、JBの場合はよりジャム度が高いように思います。
また僕の大のお気に入り曲の出だしではカウントの取り方がカッコよくて、もはや1234とは数えず、カウントそのものが最高のグルーヴになっています。
https://youtu.be/TG7myIKuHwc
こんな最高な宝石を聞かない手はないですよ、奥さん！
僕の友人のJB好きは、みんな理屈抜きでスゲー音楽に勝手に体が反応してしまうのです。こんな人二度と現れないでしょう。
ソウルのゴッドファーザー、ミスターダイナマイト、ショービジネス界で世界一忙しい男、ジェーーーーーーーーーーーーーームズ、ブラーーゥーン！を聴いてみてはいかがでしょうか。
ちなみにJBが亡くなる年、ロンドンでライブを見ました。
いつからか定番の「おばちゃん風」の髪型、低くなったジャンプ、伸びない声。そりゃそうでしょう、半世紀の芸歴で最後まで現役でシャウトしてくれるJBを超えるソウルは二度とないです。
僕はありがたく目の前でシャウトするJBの唾を浴びたのです。
終わり
ライター： 大石 悠 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"ＭＹＭ",他セッション、サポートでも活動中。
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