村上春樹とジャズ [レキシントンの幽霊]
ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。今回は「レキシントンの幽霊」についてです。
「レキシントンの幽霊」はゆとり世代の僕にとって印象の強い短編です。
短篇集なのですが、そのタイトルの短編小説が国語の教科書に載っていました。
小学生の頃、村上春樹がこんなにスケベで童貞臭くキザで孤独ナルシストファンタジー小説を書いているなんて知りませんでした。
陰毛も生えていない時期に知っていたら、嫌いになっていたに違いありません。
出会い、又、別れはタイミングが重要ということです。
「レキシントンの幽霊」は珍しく私小説で、春樹の奇妙な経験が綴られています。
ですが今回、紹介する曲が登場するのは「トニー滝谷」という短編です。
「トニー滝谷」は映画化されています。恐ろしくクオリティの高い映画です。
村上春樹の映画化で最も評価されているといっても過言ではありません。
デビュー作の「風の歌を聴け」の映画版はカルト映画とされているくらい些かマニアックですので。
「トニー滝谷」はひたすらに、救いようがない孤独を描いた作品です。
生まれた時に母は死に、中年になり猛烈な恋をし、その恋人が死に、すぐに父親も死ぬ、それだけの話です。
個人的にこの小説がすごく好きで、何回も読み返しました。
人はどれだけ他人と寄り添ってもある種永遠に孤独ですが、その孤独をある方法で表現しようとしたトニー滝谷に切なさ(美しさ)を覚えるのです。
118頁にボビー・ハケットの名前が出てきます。
Bobby Hackett – Dream
ボビー・ハケットはアメリカのトランペット、コルネット、ギター奏者です。
50年代、ムード音楽の演奏家として有名です。
マイルス・デイビスの憧れの存在であり、音色のエロさを聴けばそのリスペクトが伺えるのではないでしょうか?
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
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