村上春樹とジャズ [パン屋再襲撃③]
ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。本当は違う短編か、次の本に進もうと思ったのですが、「ファミリー・アフェア」からどうしてももう1人紹介したい人がいまして、その人について書こうと思います。
「僕は冷蔵庫から缶ビールを二本出し、ステレオ・セットのスイッチを入れて、小さな音でリッチー・バイラーク・トリオのレコードをかけた」
118頁
家で妹と二人で話す最後のシーンです。
特に山場もなく、衝撃的なラストもない、静かでゆるい短編ですが、とても素敵な気持ちになれるラストです。
Richie Bairach – Sunday song
https://www.youtube.com/watch?v=yDLRFHoG0RA
リッチー・バイラークは1947年5月23日米国ニューヨークに生まれました。
ビル・エヴァンスのSunday at the Village Vanguard収録時にヴィレッジヴァンガードにいたらしく、親交があったそうです。
26歳の時まで、みっちりとクラシックの技術を身につけたピアノは、ビル・エヴァンスと重なる美しさがあります。
でも彼のピアノのハーモニーは独特ですね。
前半から後半にかけての変化も、ソロピアニストとしての幅の広さが伺えます。
ロマン派から現代音楽までやっていたらしく、クラシックの影響も一部ではないので、彼のこだわりや癖はとても魅力的です。
不気味で危うい曲もあります。印象主義音楽か? と思うくらい。
Richie Beirach – Elm
https://www.youtube.com/watch?v=-JrrYFXGJOg
この夏に、彼の独特の世界観に浸ってみるのもいいかもしれません。
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
― 連載コラム:村上春樹とジャズ ―
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