村上春樹とジャズ [ノルウェイの森⑤]
ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。ノルウェイの森、最後の曲にしたいと思います。
みんな大好きコルトレーンです。
「ジョン・コルトレーンやら誰やら彼やら、いろんな人が死んだ。」
162頁
John Coltrane – Seraphic Light
物語は終盤に差し掛かって、主人公は徐々に虚無的になっていきます。喪失感が徐々に心を蝕んでいって無気力になっていきます。
村上春樹の大きなテーマの1つとして「孤独を描く」というのがあります。
それは誰にも触れられないとか、一人になってしまった、疎外感、という類いの孤独ではなく、誰といても、どんな女と寝ても、おフェラされても、ヴァギナを触っても、激しく何度も射精しても満たされない、自閉的な孤独です。
これを、「ナルシストが、俺かっこいいしモテるしサンドウィッチ食いながらコーヒーを飲んでおしゃれだし女にむちゃくちゃモテるけれど、孤独だ、って言っている小説でしょ?」と表現する人が多いのです。
そして暗喩、隠喩の巧さや、ストーリーのリズムではなく、雰囲気おしゃれな層がただなんとなく支持しているところも気に食わないという人がいるのでしょう。
それを踏まえた上で読まない人と読む人がいるだけですね。ノルウェイの森は孤独感(おしゃれだし女にむちゃくちゃモテる”けれど”)が強烈なのです。
トラン・アン・ユンというベトナムの監督によって映画化された本作は、大切であろうサブキャラや、後半の大事な部分を端折り、原色や壮大なロケ地によって映像的説明を試みたものの、そこまで映画的評価は得られなかったようです。
キャスティングの時点で疑問に思った方も多いような印象でした。
時代の色を出すのも難しいですし、名作文学は元の作品の力が強いために失敗する傾向にありますね。
ジョン・コルトレーンについて。
説明不要の巨星なので曲に触れます。
Stellar Regionsという晩年のアルバムに収録されている一曲目がSeraphic Lightという曲です。
どこか遠く追求しながらも、ムードがあり美しい。
バンド構成もシンプルであるから重苦しさもなく低音の渋さに集中できますね。
このアルバムを録音した5ヶ月後に亡くなったそうです。
死に際のプレイを夏の終わりと共にどうぞ。
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
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