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村上春樹とジャズ [パン屋再襲撃②]


ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。「パン屋再襲撃」に収録されている「ファミリー・アフェア」からもう一曲紹介したいと思います。

 

妹がフリオ・グレイシスのレコードをかけた。フリオ・グレイシス! と僕は思った。やれやれ、どうしてそんなモグラの糞みたいなものがうちにあるんだ。
「お兄さんはどういう音楽が好きなんですか?」と渡辺昇が訊いた。
『こういうの大好きだよ』と僕はやけで言った。
『他にはブルース・スプリングティーンとかジェフ・ベックとかドアーズとかさ』

106頁

妹が婚約者(渡辺昇)の為にフリオ・グレイシスのレコードをかけ、その”もぐらの糞”のような音楽に嫌気がさして、嫌味で自分の好きな音楽を述べるシーンです。

「やはりこういう感じの音楽なんですか?」と聞かれ、「だいたい似てるね」と答えるところに主人公の優しさとひねくれた性格を読み取ることができます。

 

Jeff Beck – Scatterbrain

ジェフ・ベックは言わずと知れたギタリストですね。

クラプトン、ジミー・ペイジと共に御三家として扱われますが、クラプトンはR&Bに、ジミー・ペイジは民族音楽を取り入れたロックを、そしてジェフ・ベックはフュージョンへとそれぞれ違うタイプのギタリストなので、簡単に比較はできません。

ギターもコロコロと変えて、急に指弾きになったりとよくわからない超絶ギタリストですが、彼の好きな話があります。

 

ジェフ・ベックはCharという日本のギタリストと親交が深いのですが、Charがジェフ・ベックの家に行った時に、ブルガリアの民謡を聴かされたそうです。

ブルガリアの民謡は美しいのですが、敢えて不協和音でハモリを入れたり、演歌で用いられるコブシと呼ばれる歌唱法などを駆使したりと、少々特殊な音楽なのですが、それをギターで表現したいと言っていたそうです。

狂人は好奇心旺盛だから天才なのかもしれませんね。





harumatiライター: 山本 春町
 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター
こう見えても文学少年。
下ネタ大好き。変なやつ。
http://harumati.jimdo.com/

― 連載コラム:村上春樹とジャズ ―
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