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村上春樹とジャズ [ねじまき鳥クロニクル①]


ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。長編、「ねじまき鳥クロニクル」から曲を紹介していきたいと思います。

 

ねじまき鳥クロニクルはとても難解な小説です。
はっきりといえば、わかりにくい小説です。しかも結構長い。

 

短篇集「パン屋再襲撃」に「ねじまき鳥と火曜日の女たち」という話が出てきます。冒頭は全く同じです。
そして「ねじまき鳥クロニクル」はかなりカットされています。そのカットされた部分を仕上げたのが「国境の南、太陽の西」なのです。

他の幾つかの短編にも「ねじまき鳥クロニクル」が散りばめられています。
これは村上春樹という作家の性癖だと思われます。その性癖、傾倒、バイアス、なんでもいいですが、孤独や死によって生まれる自意識の揺れと、妄想、パラレル、精神世界を通じて主人公=村上春樹が物語に彷徨っていく、という性癖です。

「ねじまき鳥クロニクル」で特に変わったことは、グロテスクな描写です。
1939年満州国の国境で起きたノモンハン事件を取り上げ、凄惨な描写がしっかりと書かれています。
「ダンス・ダンス・ダンス」以降、社会批判の色が出てきますが、そう言われるようになったのは「ねじまき鳥クロニクル」を書いたことだと思います。それ以降、特に注目されたのではないでしょうか。

 

あらすじを読むと、「国境の南、太陽の西」と似ています。

会社を辞めて日々家事を営む「僕」と、雑誌編集者として働く妻「クミコ」の結婚生活は、それなりに平穏に過ぎていた。しかし、飼っていた猫の失跡をきっかけにバランスが少しずつ狂い始め、ある日クミコは僕に何も言わずに姿を消してしまう。僕は奇妙な人々との邂逅を経ながら、やがてクミコの失踪の裏に、彼女の兄「綿谷ノボル」の存在があることを突き止めていく……。

152頁にアーティスト名が羅列しているので、そこからセシル・テイラーを取り上げたいと思います。

 

Cecil Taylor – Free Improvisation #3

セシル・テイラーはアメリカ人のピアニストであり詩人です。
フリー・ジャズの先駆者としての認識が一般的だそうです。
聴けばわかりますが、野性的です。音楽の躁鬱病です。

 

緊張感や焦燥感。個性や独創性を際立たせる”フリー”というものは、個性のない人がやってもだらしなく、どこか退屈なものです。
聴いている側に問いかけるパワーは自己認識や他者配慮がなく、エゴのみで魅了するようなものです。

まさにアートです。





harumatiライター: 山本 春町
 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター
こう見えても文学少年。
下ネタ大好き。変なやつ。
http://harumati.jimdo.com/

― 連載コラム:村上春樹とジャズ ―
・ 村上春樹とジャズ [国境の南、太陽の西]
・ 村上春樹とジャズ [ダンスダンスダンス④]
・ 村上春樹とジャズ [ダンスダンスダンス③]
・ 村上春樹とジャズ [ダンスダンスダンス②]
・ 村上春樹とジャズ [ダンスダンスダンス①]
・ 村上春樹とジャズ [ノルウェイの森⑤]
・ 村上春樹とジャズ [ノルウェイの森④]
・ 村上春樹とジャズ [ノルウェイの森③]
・ 村上春樹とジャズ [ノルウェイの森②]
・ 村上春樹とジャズ [ノルウェイの森①]
・ 村上春樹とジャズ [パン屋再襲撃③]
・ 村上春樹とジャズ [パン屋再襲撃②]
・ 村上春樹とジャズ [パン屋再襲撃①]
・ 村上春樹とジャズ [世界の終りとハードボイルドワンダーランド④]
・ 村上春樹とジャズ [世界の終りとハードボイルドワンダーランド③]
・ 村上春樹とジャズ [世界の終りとハードボイルドワンダーランド②]


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