村上春樹とジャズ [羊をめぐる冒険⑤]
ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。青春三部作の三作目、羊をめぐる冒険(下)から1曲紹介します。
羊をめぐる冒険を何回も記事として扱ってきましたが、これが最後です。
「ベニー・グッドマン・オーケストラが『エアメイル・スペシャル』を演奏しはじめた。チャーリー・クリスチャンが長いソロを取った」211頁
Benny Goodman – Airmail Special
小説は残り数頁で完結するところまできていて、クライマックスとでもいうべきでしょうか。
この大事なシーンでこの軽快な曲が流れるわけです。
まずベニー・グッドマンから。クラリネット奏者です。
スウィング・ジャズの代表的な人物で、1923年からその才能を発揮し始めます。差別が当たり前の時代に黒人ミュージシャンを雇った最初の人物としても有名です。
トリオ、カルテット、セクステットといった小編成や、クラシック音楽も手がけ、モーツァルトレコードを出したりと意欲的な活動。55年にはベニイ・グッドマン物語というタイトルで映画化されるほどの人物です。
チャーリー・クリスチャン。ベニー・グッドマン楽団でジャズ・ギターをしていた人物です。彼の演奏スタイルはコード弾きが中心で、アドリブやソロなどのメロディをするギタリストではなかったのです。
60年代を代表するウェス・モンゴメリーがチャーリーに影響されたのは、ソロではなくコード弾きで色をつけることだったのです。
小説の「チャーリー・クリスチャンが長いソロを取った」という文章は、チャーリーはソロというソロを取っていないにも拘らず、あえてソロと書かれているのかもしれません。それは敬意なのか、そのような表現なのか定かではありませんが、やはりチャーリー・クリスチャンはコード弾きで長いソロを取ったのです。
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
― 連載コラム:村上春樹とジャズ ―
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