村上春樹とジャズ [羊をめぐる冒険①]
ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介しつつ音楽と共に楽しんで下されば幸いで御座います。青春三部作の三作目、 羊をめぐる冒険の上巻から一曲紹介します。
141頁(出版社によっては153頁)の一文「天井のスピーカーからボズ・スキャッグズの新しいヒットソングが流れていた」というところです。
主人公の行きつけのバーが時の流れと共に場所を変え、海の見えたバーではなくなり、墓石のような高層ビルが”見渡せる”バーへと姿を変えた、という、少々ノスタルジックな心情の中、先進的なサウンドがジュークボックスから流れてきます。
ボズ・スキャッグズ /LOWDOWN
ボズ・スキャッグスはアメリカのミュージシャンで、70年代後半から80年代にかけて流行した、アダルト・コンテンポラリーを代表するシンガーです。
所謂、AORというジャンルの先駆けになった人です。
垢の抜けたR&Bといいますか、ブラックミュージック的でありながら泥臭さがなく、リズムの強調の仕方が白人的なアプローチの音楽ジャンルです。
あまりメジャーでなかったAORを表に出したのが、このボズ・スキャッグスです。
AORと言えば、有名なバンドではTOTOですが、TOTOのメンバーが集まるのは1978年で、ボズ・スキャッグスはその前にAORというジャンルにあたる音楽を世に排出していました。
具体的にサウンドが洗練された1976年発表のシルク・ディグリーズが500万枚の売上を記録したことで一躍有名になり、日本ではいまだに根強い人気があります。
タイトに仕上がった大人の音楽を、お酒のつまみにしてみてはいかがでしょうか。
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
― 連載コラム:村上春樹とジャズ ―
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