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村上春樹とジャズ [回転木馬のデッド・ヒート②]


ジャズと関係が深い日本を代表する小説家 村上春樹。彼の作品から、ジャズやソウルフルなブラックミュージックなどが登場する小説を紹介します。引き続き「回転木馬のデッド・ヒート」です。

 

「今は亡き王女のために」という短編です。
タイトルの説明は話の中に出てきませんが、これはラヴェルのピアノ曲、「亡き王女のためのパヴァーヌ」が元でしょう。

 

この短編にジャズが出てこないのですが、どうしても書きたいので、今回は印象主義のラヴェルをジャズだと思ってお聴きください。

 

この話は、村上春樹が大学生の頃に出会った、同じサークルの完璧な美女の話です。

人を傷つけることが天才的にうまい彼女は、論理的に弁が立つわけではなく、相手の感情のウィークポイントを嗅ぎ分け、抉ることがうまかったそうです。
いいところのお嬢様で、何をやっても人よりうまく出来た、容姿端麗な女の子。

そしてだいぶ時が経ち、仕事で偶然あった男が、その彼女の旦那だということがわかり、彼女は元気か? と聞くと、昔の彼女ではない、と旦那が言うのです。子供が生後五ヶ月で死んでしまったのを境に。

旦那は今の彼女の方が好きだと言っている。
自分のことだけを真剣に考えてきて、完全にスポイルされて育った(痛みに対してあまりに無防備な)彼女が、子供の死という衝撃を受けて変わってしまった、ということをタイトルが表しています。
敬意なのか、混乱なのか。

 

春樹的、エロ描写(本人の錯覚か”文学的脚色”か知りませんが)が読める短編でもあります。

美人の定義、精神的なセックスが読みたい方にオススメです。




harumatiライター: 山本 春町
 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター
こう見えても文学少年。
下ネタ大好き。変なやつ。
http://harumati.jimdo.com/

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