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Ink Spots [Sly Stone①]


そしてこのバンドコンセプトは68年のアルバム「Stand!」に繋がります。
兄貴超えを狙うフレディ、バンドのリーダーの座を狙うベースのラリー・グラハムをよそに、ここからのスライを超える才能は他にいません。それくらいこの「Stand!」、続く「暴動」は素晴らしく「スライして」います。

さあ、「I Want To Take You Higher」です。
ジェームス・ブラウンが「ソウル」を「ファンク」へと進化させ、スライももちろん続きました。
しかしファミリーストーンの解釈のファンクは、よりロック色が強く、まるで全く新しい音楽のように聞こえます。
「音楽で高みに連れていきたい」という「Dance To The Music」からのテーマの最終型がこの曲です。
この映像は映画「ウッドストック」のものです。

当時のフェスティバルとしては最大規模の20万人を動員したという平和の祭典で、スライ&ザ・ファミリーストーンはこの曲を始め、信じられないテンションでライブを展開します。

このイベントの映像はDVDでも見れますが(一家に一枚レベルだと思います)、他の出演者達がヒッピールックだったりロックファッションに身を包む中、スライたちの先を行った派手な衣装がカッコ良すぎです。フレディのアフロ、ラリーのハット、妹ローズの銀色のカツラ、この大舞台の夜に20万人を踊らせるのに最も相応しいバンドに見えませんか?

グレッグのドラムビートに絡むラリーのスラップベース、フレディのワウワウギター。この恐ろしく強力なビートで歌われるは、

力強いぜ!
サウンドがグルーヴさせるぜ!
音楽がフラッシュしてるぜ!
俺は!
俺は!
俺はお前らを高みに連れていきたいぜ!

これほど強烈な曲があるでしょうか。
これはテクニックを超えた、当時の(そして今でも通用する)音楽讃歌なのです。
スライの操るイタリア製オルガンのファルフィッサ・プロフェッショナル・コンボオルガンを見てください!
鍵盤がグレーと白(通常の鍵盤楽器は白と黒)、カラフルなスイッチが並ぶクールな楽器です。あえてこのオルガンを選ぶセンスにも脱帽です。

白眉はシンシア・ロビンソンのトランペットソロ。
僕は他のどのトランペットよりこのソロが最高だと思っています。
このメロディライン、これ以上の力強さ、ブルースフィーリング、どんなジャズマンにも出せない音です。
スライ曰く「男女問わず、シンシアは最高のトランペッターだ」と残しています。

映像の後半は別の曲「Music Lover」の後半部分が繋げられていますが、一貫して同じテーマ。スライの真骨頂。不思議なダンスも最高。

スライがデビューから貫いてきた「音楽・ダンス・平和」がこの曲、このステージに集約されているのです。

その後、潜伏期間とベストアルバムを出し、二年のブランクの後に活動を始めるスライとファミリーストーンはそれまでと全く違う暗いフィーリングに包まれるのです。

その話はまた後日、コラムにしたら興味のある方は読んでください。

Ink Spots ~All about JAZZ I think~ [Sly Stone②]

 

おしまい





oishiyuライター: 大石 悠
 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"MYM",他セッション、サポートでも活動中。

― 連載コラム:Ink Spots ~All about JAZZ I think~ ―
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