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このGuitarを聴け![Jakob Bro]


2012年に発表したデンマークの音響派Thomas Knakとの共作「Bro/Knak」
Disc1ではPaul Bleyのソロピアノ、チェロやテルミン、混声合唱などを起用し、室内音楽的アプローチを持った楽曲や、カントリー調の楽曲など、いずれもジャズのフィールドに捉われない自身の音楽性の深層を追究した内容になっています。

 

こちらはチェロにハープ、ボーカル、そして空間たっぷりのギターの編成。
8分近くまでBroは映像に出てきません。
さらに最後の最後までギターを弾く描写もありません笑
ずっとエフェクターを弄くり倒す様が記録されているのみ。
こちらも「このギターを聴け!」というより「この余韻を聴け!」という感じ。

 

そして今年発表されたECMからのリーダー作ではThomas Morgan、Jon Chrirtensenとのトリオでもって、点描のようなアンサンブルを構築しております。

ギタートリオというステレオタイプなフォーマットにおいても内省的な音楽性は変わらず。
決して速いパッセージや複雑なスーパーインポーズなどを用いた派手なプレイはせず、発する音のひとつひとつにストーリー性を込めていく姿勢は昨今のコンテンポラリージャズシーンにおいて稀有な存在だと感じます。

 

Broは「ここのフレーズが!」とか「ここのボイシングが!」といった瞬間で捉える分析はあまり意味をなさないギタリストであるために、どうしてもプレイヤーとしての見方は二の次になってしまいがちですが、楽曲へのカラーリングの巧みさやエレキギターの持ち味を最大限に活かした音響的表現など、ここまで色彩感覚豊かなギタリストはそうはいないと思います。

拡張される21世紀のジャズシーンにおいて、頑なに内省的な表現活動することはすなわち、ひとつの確固たる「個性」に通ずるもの。今後もJakob Broの「深化」に期待するばかりです。
さぁ、テレキャスターを買いに行こう。

 

最後に数あるBroの作品から、イチオシ作品とイチオシトラックをご紹介させてください。
ご紹介するのはコラム内でも紹介したNY録音3部作の1枚目。
現在のBroの音楽性を語る上で外せぬ作品です。


Jakob Bro / Balladeering
Personnel
Jakob Bro – guitars
Bill Frisell – guitars
Lee Konitz – Sax
Ben Street – Bass
Paul Motian – Drums

#2 Evening Song
左チャンネルにFrisell、右チャンネルにBro
決して多くを語らないギターの響き。その空間を悠然と泳ぎ回るKonitzのサウンドスケープがたまらないです。

#5 Greenland
極めてシンプルなベースラインとリバースディレイを駆使した幻想的なBroのカラーリング、絶妙です。

#7 Sort
冒頭の息を飲むような美しさ!
Konitzが入ってなお、冷たくも温かい独特な世界観が展開されていきます。
Motianのシンバルワークも冴え渡りまくり。

そして今年の冬、BroがSongXさんのイベントで再来日するとの情報が!
気になった方は是非チェックしてみては如何でしょうか?僕は半身もがれたとしても行きます。

 




tadahirokiライター:多田大幹
1991年生まれ、ゆるふわアブストラクトな空間系ギタリスト。草木も眠る丑三つ時、日本酒片手にECMを聴き漁るグローバリズムを発揮している。EP、The Portrait of Lydian Gray 発売中です。
          e-onkyo:The Portrait of Lydian Gray

 

― 連載コラム:この●●を聴け! ―
・ このVocalを聴け![Lianne La Havas] (ナミヒラアユコ著)
・ このNoiseを聴け![HIROSHI HASEGAWA] (上野健太郎著)
・ このNoiseを聴け![灰野敬二] (永田健太郎著)
・ このDrumsを聴け![Jorge Rossy] (秋元修著)
・ このGuitarを聴け![Wayne Krantz] (小金丸慧著)
・ このTrumpetを聴け![Ambrose Akinmusire] (佐瀬悠輔著)
・ このSaxophoneを聴け![Miguel Zenon] (萩原優著)
・ このGuitarを聴け![Adam Rogers] (磯貝一樹著)
・ このDrumsを聴け![Ari Hoenig] (秋元修著)

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