このNoiseを聴け![灰野敬二]
ギターヒーローとしての灰野敬二
灰野敬二は、ジャズでもノイズでもない。 彼の音楽は、ジャズ的であったり、ノイジーであったり、即興的であったりする。 しかし、彼の音楽は灰野敬二の音楽であり、強いて言うならば、ロック(ブルース)である。
本コラムは2015年4月1日のエイプリルフールに掲載されたコラムです。
先ずはwikipediaより、経歴を引用。
灰野 敬二(はいの けいじ、1952年5月3日 – )は、千葉県生まれ、東京在住の音楽家。 非常に厳格な「音」へのこだわりをもとに、現在でも実験的な前進を続ける野心的な音楽家であり、ロック、サイケデリック、ノイズ、フリー・ジャズ、フリー・ミュージックなど、扱う音楽のジャンルは非常に多岐に亘る。 一般的にはノイズ・実験音楽および現代音楽の系譜で語られ、過激なノイズ・ミュージックのアイコンとみなされることも多い。
と、ある。 しかし、灰野敬二は、やはり、ロックンローラーだと思う(本人も、即興やノイズという言葉にとても慎重な姿勢を示している)。
僕が初めて灰野敬二を観たのは、2010年4月1日。六本木Super Deluxeでの大里俊晴氏の追悼公演。 最初に短くリュートのソロをやった後、エレクトリックギターで確か30分くらい。 大音量でギターをかき鳴らし、叫ぶ灰野敬二から圧倒的なエネルギーと、そして大いなる父性を感じた。 エフェクターとアンプでたっぷりと歪ませ、どっぷりとした質感/重量感を与えられたそのサウンドは、灰野敬二の体から発せられているかのようであった。
当時、ギターでの即興演奏を始めた直後の僕は、このライブに出会ってしまい、大きく道を踏み外してしまったかもしれない。
長いキャリア、多彩な楽器、膨大な録音と公演の極々一部しか追えないが、今日は、灰野敬二をロックギタリストとして、ギターヒーローとして、近年の演奏を中心に紹介してみたいと思う。
灰野敬二のキャリアの中で「不失者」はとても重要な位置を占めるロックバンドではないか。1979年結成と歴史も古く、サイケデリック、実験音楽、ノイズ、ジャズ、アヴァンギャルドなど様々な要素を含んだ、ドラム、ベース、ギターという如何にもロックバンドな編成(とはいえ灰野のグループの多くはこの編成)。
不失者 – おまえ@SuperDeluxe 2013/11/21 Fushitsusha Keiji Haino
ベースは元ゆらゆら帝国の亀川千代、ドラムにSETE STAR SEPT、Kiyasu OrchestraのRyosuke Kiyasu。
ほとんどBm一発、灰野がザクザクとリフを刻み、歌い、進んでいく。 8:20辺りで如何にもギターソロなチョーキングから入るが、すぐにノイジーにかき鳴らす展開。 後半シンプルなペンタトニックなフレーズとフィードバックとノイズが入れ替わり立ち代る。
「不失者」は何度かメンバーチェンジを経ている。少し前の別の編成では、こちら
不失者 Fushitsusha@渋谷www Live at Shibuya WWW 6,JULY.2011
ベースはGround Zeroやアルタードステイツのナスノミツル。ドラムはハイライズ、光束夜、マヘルシャラルハシュバズなどに参加している高橋幾郎。
先ほどの演奏よりは、リズム隊に関しては少し自由度の高い演奏と言えるかもしれない。 8分過ぎ辺りの、やはりギターソロのような部分で、灰野はシンプルなフレーズとノイジーなプレイを混ぜている。
ここら辺のギターソロを聴くと、僕が感じるのは、ブルース。
灰野敬二が好きだという、Blind Lemon Jeffersonの演奏を。
Black Snake Moan – Blind Lemon Jefferson
大分雰囲気はちがえど、ギターのフレーズや、ノイジーな感じ、そして歌とのコール&レスポンスが、まさにブルースそのもと言っても過言ではないのでしょうか。 (ブルースを大音量で、といえばやはりジミヘンでしょうか)
「不失者」と同じトリオ編成の他のグループ、「静寂」。
静寂 SEIJAKU(part2)@Koenji HIGH(2011.5.10)
ベースはこちらもナスノミツルで、ドラムはDORAVIDEO 一楽 儀光。 灰野自身「ブルースバンド」とコメントしている。 (近年、灰野はHardy Soulという60年代のリズム&ブルースを演奏するバンドで歌っている)