The Distance Between Zero And One vol.5
そんな中、私がこのコラムで取り上げたいのは2014年発表「Music For Robots」
このアルバムは5曲入りのミニアルバムで、内容はどんなものかというと動画を見ていただくのが一番早いでしょう。
Squarepusher × Z-MACHINES
Squarepusher x Z-Machines – Making of ‘Music For Robots’
つまり、このアルバムはロボットに自動演奏させることによって生まれたアルバムなのです。ここまでテクノロジーを使っておきながら、そのロボットたちの演奏方法は完全なアナログ。ギターはピックを使って弾きドラムはスティックを使って叩いています。ですがその演奏能力は人間をはるかに凌駕するものです。特筆すべきはギターのロボット(名前:マッハ)はBPM(テンポ)1000を超える速弾きができることでしょうか。
Squarepusherはオファーを受けて楽曲演奏マシーン、Z-Machinesを使ったキャンペーンに楽曲を提供するのですが、そこから彼がさらに曲を作りこのアルバムの発表にいたりました。
私がこのコラムに他のフルアルバムではなくこのミニアルバムを選んだ理由というのも、動画の冒頭で彼のコメントがあるように、「エモーショナルなマシーンミュージックという未知の領域を開く」現代の音楽界における重要なアルバムになり得る作品なのかもしれないからです。
それまでSquarepusherが挑戦し続けてきた「音楽におけるテクノロジーと人間」というコンセプトにおいてこのZ-Machinesは彼にとって興味深いデバイスだったことに違いありません。いままで私たちが慣れ親しんだロックやポップスに当然のように使われてきたエレキギター、ドラム、シンセサイザーが人間の手や足ではなくマシーンによって演奏されるというデジタルかつアナログな最新テクノロジーが音楽にもたらす効果はとても革新的なものだと思うのです。
この「Music For Robots」の曲たちはロボットよりも頭が固いアコースティック生演奏至上主義の人たちの耳にはどう聞こえるのでしょうか。きっと反射的に全然音楽的じゃないとか無意味だとか言うのかもしれませんが、実際に様々なテクノロジーを使って楽曲を創るのは我々人間です。人間だけでは物理的に不可能なことを可能にするテクノロジーを生かすも殺すも人間次第であって、演奏手段の可能性が広がることを妨げることはあってはならないはずです。それにギターやドラムやピアノやバイオリンだってご先祖様から引き継がれてきた立派なテクノロジーです。それをどう使うか考えることをやめてしまうのは、それこそ人間の価値を失うことになるのではないでしょうか。
音楽におけるテクノロジーは急激な速度で進化を続けています。
その分野において挑戦をし続けるSquarepusher。好きにならずにはいられないでしょう?
最後に彼の最新アルバムから1曲、ライブ動画をご紹介。いまだに信じられないのですが、最新アルバムのすべての曲はワンテイクで録られ、無編集とのこと。
Squarepusher – “RAYC FIRE 2 LIVE SESSION” | Most Valid Reason Vol.11 | Sony’s Music Video Recorder
最後までご覧いただきありがとうございました!
ライター:奥村純平 京都府出身。小学校4年生のころ、担任の先生にドラムを教わったことからきっかけにドラムを始める。中学高校時代は吹奏楽部に所属し、大学在学時に音楽活動をスタートさせる。現在はジャズドラマーとしての活動のほか、自身が傾倒する電子音楽の活動への道も模索中。
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― 連載コラム:The Distance Between Zero And One ―
・ The Distance Between Zero And One vol.4
・ The Distance Between Zero And One vol.3
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・ The Distance Between Zero And One vol.1