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Ink Spots [Fela Kuti]


 

このフェラクティという人の音楽を少しでも多く、長く楽しむために必要な要素は先に書いた音楽の背景にあるもの、世界、情景、時代、人物であると思います。
もう一つは音楽そのものの刺激性です。

それまでのアフリカの娯楽音楽は、いわゆる裕福な人たちが楽しんでいたハイライフというジャンルのダンスミュージック、アフリカの西海岸を中心に発展したことから、いわゆるカリブ海のリズムやアンサンブルをイメージするようなサウンドが多かったことと思います。

1950年代〜60年代の富裕層に向けて演奏されるダンスミュージック。皆様はどんなものを想像するでしょうか。

ピアノがいてエレキギターがいて。アフリカですから多様な打楽器もいて。
富裕層に向けてのショーですからホーンセクションが豪華に彩っているでしょう。ダンスホールで生バンドが演奏するカリプソ、ハイライフ、誰もが憧れる生活(正にハイライフ)を演出したと思います。

 

でもそんなものはマヤカシ、実際は黒人は世界では差別の対象であり黒人解放運動や暴動が世界各地で起こり、世界は戦争へ向かっていきます。

フェラクティは自分の信念を乗せる音楽に、アメリカのファンクを選んだようです。
ジェームズブラウンの発見した新しいリズム「ファンク」、アフリカ人のフェラクティがその攻撃性と刺激の強いビートにアフリカ人としてのリズムを融合させたミクスチャーミュージックを僕はアフロビートだと認識しています。アフリカ人の発展させた音がアフリカに帰ってきた音楽なのかも知れません。

 

いまあなたが聴いているフェラクティの音楽は長く退屈に聴こえるでしょうか。
この曲の長さ、時には30分にも及ぶ演奏のほとんどがスタジオライブ録音されているのは素晴らしいことです。

イントロからビートインしていくところ、コーラス、パワフルなホーンセクション、様々な組み合わせのピアノのメロディ、フェラクティの叫ぶメッセージ、またコーラス・・・

めくるめくアンサンブルの全てに意味があり演奏しているミュージシャンの緊張感があり、これほど聴きごたえのある音楽は他には少ないでしょう。
あくまであなたがこれを少しでも「面白い・凄い・かっこいい」と思えば、の話です。

 

長くなりましたが、フェラクティが発表した作品数や生い立ちなんかは沢山の書籍やインターネットでも知ることができるので、興味のある人は調べてみてはどうでしょう。

ぼくとフェラクティの出会いは、8年ほど前に下北沢のライブバーで店長に教えてもらったのが最初です。
最初はこの世界観のどこが良いのか解らなかった。少しもファンキーさが解らなかったのです。

開場して、二人連れの女性客が入ってきたときに店長は僕に
「いや〜大石クン〜、フェラ、マジサイコー」と言いました。

あのときの二人の女性客の視線を僕は忘れません。

おしまい。





oishiyuライター: 大石 悠
 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"MYM",他セッション、サポートでも活動中。

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