阿部薫論 哲学(1/2)
アングラシーンに凛然と輝く孤高の天才、阿倍薫の「速さ」「哲学」「快楽」について書いていきます。今回から阿部薫の哲学について考えていきます。
阿部薫は学生時代、成績は学年トップで、母親や妹はわからないことがあれば阿部薫に聞いたそうです。
十九歳の頃の自室の写真を見ると、平積みされた本が壁のようになっています。
相当な読書家だったようです。
ジャック・デリダというフランスの哲学者に傾倒していたようで、阿部薫の伝記を基に作られた映画「エンドレスワルツ」でこんなシーンがあります。
阿部薫の演奏を聴きに来ていた男が連れの女に
「フリージャズはフッサールの言うところのイデア性に於ける形式の形而上学なんだ。フッサールは<声と現象>って本を書いたフランスの哲学者で、現代の現象学の権威……」
と話しているのを後ろで聞いていた阿部薫は、
「<声と現象>を書いたのはデリダだよ。ついでに言っておくとさ、巷に氾濫しているような音楽がイデアなんだな。フリージャズってのは、そのイデア性を解体して……」
このシーンは実際にあったわけではなく、脚色されたエピソードです。
本当はただデリダの<声と現象>を渡しただけです。
イデア・イデア性とはなにか?
そしてそれを解体するフリージャズとは?
これを次回書きたいと思います。
ライター: 山本 春町 映像クリエイター/ミュージシャン/ライター こう見えても文学少年。 下ネタ大好き。変なやつ。 http://harumati.jimdo.com/
― 連載コラム:阿倍薫論 ―
・ 阿部薫論 速さ(3/3)
・ 阿部薫論 速さ(2/3)
・ 阿部薫論 速さ(1/3)
・ 阿部薫論 [はじめに]