Ink Spots [赤い家とプリンス]
まずはこの曲を聴いて下さい。
これはSly & The Family Stone の8分の6拍子のスローなファンクでメンバーのソロが聴けるインスト曲です。
この曲もブルースを下敷きにした、いわゆるブルースではなくファンク側からのアプローチのブルースです。
1969年発表のアルバム収録なので、ジェームスブラウンの「Get Up(Sex Machine)」よりも前の曲という事になります。ある意味でこれはブルース、ソウル、ロックを融合させてファンクという新しいジャンルが生まれる瞬間の曲なのかもしれません。
そう考えると「ゲロッパ」で有名なジェームスブラウンの「Get Up(Sex Machine)」がスライに影響された可能性すら出てきます。あのジェームスブラウンが同年代の若手ミュージシャンの曲をチェックしていないはずが無いので、タイトルが同じなところにも偶然以外の何かを感じるのは僕だけでしょうか?
話がそれているようで、実はこの話がしたかったのですがPrinceです。
プリンス(以下殿下と呼ぶ)のカバーバージョンはジミヘンドリクスのトリビュートアルバム「Power of Soul」に収録されていて、僕は最初このアルバムの雰囲気にピンとこずあまり聴いていなかったのですが、ある日何となく聴き返していたらとんでもないカバーバージョンにぶち当たったのがこの殿下の「Red House」です。
スタンダードなブルース曲が完全にスライ仕込みの8分の6拍子ファンクになっているのです。
実はこのバージョンをインターネット上で探したのですが見つからず、残念ながら動画を貼るわけにはいかないのですが、この流れでのブルース曲をスライというフィルターに通して発展したファンク曲に変換させる殿下の才能に脱帽した次第です。
上に書いた通り、誰もがこの曲をカバーする際はブルースっぽく表現するのが常なのですが、さすが殿下と脱帽しました。
殿下がファンクスター達と共演したライブ映像はありましたが、これはまだまだブルースをやっているようであり、是非このアルバムを見つけて聴いてほしいです。
ジミの曲の可能性と表現豊かなメロディ、世界中のギタリスト達が夢中になった本物の「最新型の」ブルースを体験できるとともに、そんな事は関係なくただかっこいい曲を書く人だなあといつも思います。
ジミヘンドリクスに持っている偏見を払拭できれば幸いです。
動画が無いと説得力の無いコラムになっているようで申し訳ないですが、また次回。
ライター: 大石 悠 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"MYM",他セッション、サポートでも活動中。
― 連載コラム:Ink Spots ~All about JAZZ I think~ ―
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