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Ink Spots [Duke Ellington]


これは僕のスーパーフェイバリットな一曲です。
このイントロ、アウトロのテーマに前回も書いた「アフリカ」を感じます。アフリカの自然、母なる大地といったのではなく、原始の人類の「ブラックマジック」的なモノです。

原始の黒人の集団が火を囲んで呪術をする・・みたいな絵が浮かんできます。それはエリントンの音楽とは関係がないのですが・・(本当は一番好きなバージョンのこの曲があるのですがYoutubeの中では探せませんでした。「The Popular」というアルバムに入っているバージョンです)

 

中盤転調して明るい雰囲気になるところでは、スーツを着た1920年代の黒人の姿も浮かんできます。そしてまたマイナーキーになり、ブルースフィーリングとクラシカルな音楽を聴く事ができ、最終的には太古が鳴り響く不協和音のセクションで終わりを迎える。

これほどまでジャズ的な要素の中での「怪しさ」を持った曲を僕は知らないかもしれません。

これは白人やその他の歴史背景を持つ人種には決して作れなかった音楽で、アメリカというコンプレックスを持つ国に生まれたアフリカ人の血でしか表現できなかったものだと思います。

 

もし僕が「ジャズとは」と聞かれると、この一曲を上げます。

このフィーリングほど黒人音楽としてのジャズを表現している曲は無いのではないでしょうか。いまはブラックミュージックは細分化されて文化的にも歴史的にも「無かった事」になっている感もありますが、アフリカ人としての文化が今も音楽の中に受け継がれているのです。

もっと言ってしまえば、アフリカ起源説で言うと世界の芸術文化にアフリカ的な要素が脈々と流れ続けていく事で、最終的には世界中に黒人の要素が入った文化形態に戻るのではないでしょうか。

現在我々が聞けるポピュラー音楽には黒人音楽の要素無しには成立しないものが多いです。

それはゴスペルがブルースを生み、ブルースがジャズやロックを生み、様々な合体を繰り返して(ロックによるところは大きいですが)いまの音楽の基礎になっています。

ジャズが無かったら、ブルースが無かったら、エレキギターは生まれていなかったかもしれないです。

そうすると今我々が聞いているミスチルはバンジョーを弾いて歌っていたかもしれない(バンジョーも元々は西アフリカのンゴーニという楽器がアメリカに持ち込まれて生まれた楽器なので、バンジョーすら持ってないかもしれません。三味線くらいはあるかもしれないです)。

 

エリントンの「The Popular」というアルバムは僕が生まれたくらいの頃から聴いているアルバムで、恐らく死ぬ時まで聴き続ける一枚だと思います。ビートルズと同じくらい思い入れのあるミュージシャンは、後にも先にもこのエリントンだけなのです。

Youtubeに無いのが幸い、是非ご家庭に一枚いかがでしょう?

これはゴッホの絵を買うのと同じくらい価値があって、ゴッホの絵を買うより安く、長く楽しめる芸術作品としてお勧めします。

まあ嫌いな人は嫌いやろうけど・・・

でわまた





oishiyuライター: 大石 悠
 鍵盤奏者。幼少の頃から両親の影響でレコードを愛聴。特に生前の時代である60年-80年代のブラックミュージックシーンに魅力され、人間味のある泥臭くもパワフルな演奏スタイルを持つ。即興ジャムオルガントリオ"MYM",他セッション、サポートでも活動中。

― 連載コラム:Ink Spots ~All about JAZZ I think~ ―
・ Ink Spots [Roland Kirk]
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