【Lowland Jazz】インタビュー後編【hab_point】
いよいよ明日(6/14)リリースされるLowland Jazz 1stアルバム「hab_point」。先週から2週に渡り掲載しているインタビュー記事後編。
先週はLowland Jazzの結成秘話やアルバムの制作秘話を中心にインタビューさせていただき、発売を明日に控える本日のインタビュー後編では初音源化された 楽曲のアレンジについてお話いただきました。
今回インタビューに応じていただいたのは、先週に引き続き具理然さん(Tp)、小島裕規さん(Pf/Arr)、高井天音さん(Tb)さんの3名。
インタビュー記事の前編はこちら⇒【Lowland Jazz】インタビュー前編【hab_point】
――「夜咄ディセイブ」について制作秘話があればお教えいただけますか?
小島:Lowland Jazz でアレンジをする際は、プロデューサー・バンドリーダーの2人から曲と共にアレンジの”お題”をもらい、それを元にアレンジに取り掛かります。そしてこの曲のお題は”Jamiroquai”でした。が、完全無視してやりました(笑)
僕が付けたお題は、Chase やChicago のような”ブラスロック”アレンジですね。
具:アレンジをお願いして、譜面が出来上がって、メンバー揃って音を合わせて、そこで初めてお題と全然違うアレンジを書いてきたことが発覚しました。
全然ちゃうやん!でもかっこいいからこのままで行こうって(笑)
小島:吹奏楽なりビックバンドで元がロックの曲をアレンジして演奏する場合、ロックでお決まりのおいしいギターリフをブラスが演奏する事が多いです。その間ギターはリズムを刻む役割になるなどギターの立ち位置が下がることに不満を覚えていました。夜咄ディセイブの原曲はハードロック調でギターをフューチャーしている楽曲なので、ビックバンド編成にアレンジしてもギターのおいしいリフをそのままギターに弾かせるなど、今までのビックバンドでのギターの立ち位置の変化を試みました。昔からの野望の「ビックバンドでロックをやる」。音楽ジャンルを編成に寄せないアプローチですね。
具:この曲はロックサウンドにこだわり、Mix もロックよりの音作りをしています。
――「メランコリック feat,that」のアレンジについてお話いただけますか?
小島:私はGil Evans のジャズアンサンブルアレンジが大好きなのですが、全曲Gil Evans がアレンジャーとして参加した、アストラッド・ジルベルト(ジョアン・ジルベルトの最初の奥さん)のアルバムの「Look to the Rainbow」のオマージュとしてこの曲を作りました。多少不安定なギル的なハーモニーが、硬直性のあるボサノバのリズムの上に乗ると緊張と緩和により独特なサウンドになります。「ボトム(リズム)とトップ(ハーモニー)」が「緊張と緩和」の関係性であると面白いのではないかと思って作りました。
ただし、同じパートで隣の人同士の音がぶつからないように工夫しています。違う楽器同士で2度のぶつかりを作ります。音色が違うとぶつかり方がナロー(制限された)になります。
メランコリックのアレンジ手法は「Just a game」と同じです。メランコリックが『ジルベルト(ボサノバ)+ギル』ならば「Just a game」 は『エミネム(Hip-Hop)+ギル』になります。
――「脳漿炸裂ガール」は聴かせどころの仕掛けが多く面白いアレンジですね。
小島:世の中には多くのジャズアレンジ動画や企画CD 等ありますが、どれもこれも”ジャズという枠にはめ込ませるアプローチ”が多いです。この曲の原曲はとても尖っている音楽なので、逆により”尖らせたアレンジにするアプローチ”をする為にフリージャズ要素やポストプロダクション(編集)を大いに取り入れました。ジャズアレンジというものはどうしてもアダルトなイメージが付きまといますけど、こう言うアレンジもありなんだよと。
具:もし原曲を知っている人がいたら、こういうアレンジのアプローチの仕方があるんだなと感じていただけたら嬉しいなと思います。
小島:冒頭のフリージャズは本編のレコーディングを先に録った後に、冒頭のシーンを録ったのでメンバーの皆さんの倦怠感やどうにでもなれって感じが撮れていい感じになりました(笑)
具:中盤のシーンでボサノバのリズムになる所があるのですが、フルート・クラリネット・ミュートトランペット・トランペット・トロンボーンの5管が一斉に好きにソロを取り、フリージャズっぽさを出しました。
小島:管の組み合わせの音色はディキシーランドジャズっぽいですよね。アーリージャズってたまに質感がフリージャズっぽく聞こえる事があるじゃないですか。本当になにも決めずに演奏してるんだろうなぁみたいな。
―― フリージャズの要素以外にもナレーションやDJ のスクラッチ音など入っていますね。
具:冒頭のナレーションについてですが、REC 直後に小島がPC の前で何かをしているんです。Mix をやってるのかなぁぐらいにしか思っていなかったのですが、とあるナレーションのフリー音源素材を探していたらしくそれをいつのまにか音源に重ねていました。なんのナレーションを使っているのかはCD を聞いてみての楽しみにしてください。
小島:DJ のスクラッチ音に聞こえるものは、ピアノの音です。ピアノの音をサンプリングし、ディレイを反復させて周波数を上げて作っています。いわゆる”発信”と言われるものですね。
高井:この曲のようにテンポ 340 でトロンボーンの単音を吹くことはなかなかないことです。ここではBill Watrous や、Carl Fontana、 が使っている、Doodle(ドゥードゥル)タンギングを取り入れています。ちなみにからくりピエロの動画のソロの最後でもDoodle タンギングを使っています。
具:日本人でもDoodle タンギングの習得者は少ないと言われています。同年代で考えると高井、石川のトロンボーンがいなければ出来なかっただろうと思います。
―― 次のページでは収録曲の聴きどころ、アレンジ、制作秘話など聞かせていただきます。