【Lowland Jazz】インタビュー前編【hab_point】
ネット発ジャズバンドとしてニコニコ動画を中心に活動を始め、わずか結成1年でニコニコ超パーティに出演。
そのクオリティの高さから、現在サブカル市場だけでなくジャズ界からも注目される中、今月14日にLowland Jazz 初アルバム『hab_point』をリリース。
アルバム最新作の聴きどころ・制作秘話についてメンバーにインタビューに応じていただいた。
今回インタビューに応じていただいたのは、バンドリーダーの具理然さん(Tp)、ビッグバンドアレンジ・ピアニストの小島裕規さん(Pf/Arr)、山野ビックバンドコンテストで優秀ソリスト賞を受賞したスーパートロンボーニスト高井天音さん(Tb)さんの3名。
左から、具理然さん (Tp) ・小島裕規さん(Pf/Arr) ・高井天音さん(Tb)
―― まず、この3名の皆さんはどこで知り合われたか。バンド結成の経緯について教えてください。
具:実は私達3人は国立音楽大学出身で、在学中も親しい間柄でした。
私自身、大学を卒業したら自分のバンドを作って活動したいという気持ちがありました。
何故なら、今の音楽ビジネスシーンは、仕事に対してミュージシャンの数が多く仕事をもらうスタンスだけではなかなか若手に仕事が回ってきません。そこで自分たちが発信するバンドを持つ重要性を感じていたからです。
大学3年の時、ニコニコ動画で人工音声のボーカロイドで歌っていた楽曲を生の人間がカバーする「歌ってみた」動画を見ていた所、私の弟でありLowland Jazzのプロデューサーのユーヨンから、同じようにボカロの曲を生バンドでジャズアレンジしてみたらどうだと助言をもらいました。
ローランドジャズサウンドの代名詞になっているサックス:4人,トロンボーン:3人, トランペット:3人,のホーン編成は、ビックバンドサウンドとフットワークの良さから新しいジャズバンド編成として以前から構想がありました。(一般的なビックバンドのホーン編成はサックス:5人,トロンボーン:4人, トランペット:4人)ニコニコ動画でもビックバンドサウンドのジャズバンドは見当たらなかったので、ボカロ曲を派手なジャズで演奏するバンドをやろうと方針が決まりました。
卒業が近づく大学4年生の12月頃、メンバー集めの一番最初にバンドの要になるアレンジャーである小島に相談しました。もし、彼に断られたらこのバンドをやるのは辞めようと思っていました(笑)その後、当時私の在籍していた国立音楽大学のNewTide Jazz Orchestraのメンバーを中心に、小島の紹介で青山学院大学 Royal Sounds Jazz Orchestraで演奏をしていた小林(ba)、他、僕の一緒にやってみたいという人に声をかけました。誰ひとり断る人もいなく皆、快く受け入れてくれました。その結果、山野ビックバンドコンテストに入賞経験のある実力派揃い(年3人しか選ばれない優秀ソリストも3名)で且つ、離れても2歳離れの近い年同士で結成しLowland Jazzのサウンドが出来上がりました。
―― 6/14リリースの「hab_point」についてお聞きしたいのですが、アルバム制作費をクラウド・ファンディングで集めたやり方はとても珍しいですね。
具:クラウド・ファンディングの利用はプロデューサーの提案です。
システムとして支援を受ける代わりに相応の特典をお返しします。感覚的にはCD購入の代金を先に支援してもらっているようなものなので僕らを応援してくれる人がいるのであれば試してみようと話が進みました。クラウド・ファンディングを利用する事の話題性もありジャズを広めたいというメッセージを色々な人に見てもらうことも狙っていました。
結果的にクラウド・ファンディングのプロジェクトは成功。Lowland Jazzはニコニコ動画などネットでの活動を通して全国にファンがいます。クラウド・ファンディングは僕らにとって非常に有効な手段であったと思います。そしてなにより応援してくれるファンがいる事に「僕らも頑張っていいものを作らないと!」と非常に励みになりました。
―― アルバムの収録曲を教えていただけますか?
具:アルバム全10曲中、初収録曲は「夜咄ディセイブ」、「地球最後の告白を」、「メランコリック feat,that」、「脳漿炸裂ガール」、「Nyanyanyanyanyanyanya!(ビックバンドアレンジVer.)」の5曲。他の5曲は過去に動画をネットにアップしている曲になりますがリズムセクションやソロは取り直してRemixしたので、また違った感じで楽しく聴けると思います。
――「心拍数#0822」「メランコリック」で共演しているthatさんとのコラボの経緯についてお教えください。
具:実はニコニコ動画での活動の中で知り合ったわけではなく、僕とthatさんの同郷(山口県)が一緒でお互いの共通の知り合いが出会う機会を設けてくれたのが始まりです。僕はthatさんが過去所属していた”Absorb”というバンドのファンだったので、会う機会をいただいた時は驚きました。実際にthatさんにお会いした時、即コラボのお願いを申し出て去年「心拍数#0822」を一緒に演奏させてもらいました。今回のアルバム作成にあたりthatさんと再コラボし「メランコリック」という曲でボーカル参加していただいています。
thatさんはピッチの手直しを一切必要としないうえに、ニュアンスのリクエストなどに完璧に応えて下さり、ボーカルの録音にしては驚異的なtake数の少なさでこなしてくれました。その場にいた全員が流石「プロ」だなという印象を受けました。
―― いくつかの曲でパーカッションの音が入っていますがどなたが演奏されていますか?
具:パーカッションで参加しているのはLowland Jazzサブメンバーの福岡高次です。アルバムにも「夜咄ディセイブ」、「独りんぼエンヴィー」、「メランコリック feat,that」の3曲のレコーディングに参加してもらっています。
小島:特に夜咄ディセイブはコンガ・ボンゴ等を多重録音して土臭い、ブラックな雰囲気を出すのに重要な役割を担ってもらっています。
―― 次のページでは収録曲の聴きどころ、アレンジ、制作秘話など聞かせていただきます。