音楽留学報道局 L.A.支局 Vol.3
アメリカでは9月の第一月曜日はレイバーデーという労働者の日と定められ、全ての州で祝日となっています。この日は学生にとっては新年度のはじまり、そしてアメリカ人にとって夏の終わりを告げる日となっています。
一枚めくるごとに薄くなっていくカレンダーを見るたびに、あぁもうこんなに経ってしまったのかと感じますが、9月は特別そう感じます。 冬を越え、春を越え、夏を越え、一年の山場を越えてしまったような寂しさを感じます。
アメリカに来てもう間もなくで3ヶ月が経ちます。 驚きの連続だった毎日にも慣れてきました。
今月は先月に引き続き”タダ”のライブについて書いていきたいと思います。 先月は野外コンサートでしたが、今月はレストランやバーなどのライブをご紹介します。
まずはぼくの住むトーランスから車で約40分ほど、HollywoodにあるDesert Roseというレストランです。
ここのレストランは渡米してすぐにLA jazzというロサンゼルスのジャズ情報を網羅しているサイトで見つけました。
ドラマーMark Z Stevensさん率いるトリオが毎週土曜日に19時から23時まで3ステージ、たっぷり演奏しています。
写真を撮った日はゲストにギタリストが参加し、いつものトリオからさらに華やかなステージになりました。
こちらの写真を見ていただければ分かるように、ここDesert Roseは外のテラス席、そして中のテーブル席に分かれています。
お客さんを見ていても、すべてのお客さんがステージを楽しんでいるわけではなく、テーブルによってはカップルが二人だけの世界に入っていたり、グランマのバースデーを家族でお祝いしていたり、日によってはテラス席がパーティー会場になっていたり、様々です
しかし、演奏はBGMレベルではありませんし、もちろんアマチュアでもなくベテランのミュージシャンが最高の音楽を奏でています。
ですが、テーブルチャージはありません。
もちろんチップを入れる小さな箱はステージにあるのですが、それを宣伝することはなく、あくまでお客さんが自由に気持ちを入れていくくらいです。
いくつかの疑問が湧いてきます。 こんなに素晴らしい演奏なのになぜミュージックチャージを設定しないのか、なぜ”タダ”なのか、ミュージシャンは生活していけるのだろうか…
次にご紹介するのはHermosa Beachという海岸沿いにあるLighthouse cafeです。
前身のレストランがオープンしてから80年、この地に佇んでいます。 lighthouseという名前になったのが1940年。 第二次世界大戦後、ベーシストHoward Rumseyがここで日曜日にjam session をはじめ成功、音楽をやる前はほとんど空席状態だったのが満席になり、Rumseyはお店から雇われることになったそうです。
バンドはLighthouse All-Starsと呼ばれ、Bud Shank,Shelly mann,またMax Roachもレギュラーだったこともあるそうです。
またArt Pepper,Chet Baker,Miles Davis,Cannon Ball Adderley,Art Blakey,などその他にもたくさんのレジェンドたちがここでレコーディングをしました。
間違いなく50年代から70年代にかけて西海岸のジャズを盛り上げていた場所だと思います。
オーナーが変わりしばらく演奏をしていなかった期間もあったようですがいまは毎週水曜の夜、土曜日、日曜日の昼に熱い演奏が繰り広げられています。
店内は縦長でその中央にカウンターとステージが向かい合わせになっています。
こちらのブッキングを担当しているのは前のブッキング担当の奥さんのグロリアさん。 80歳だそうですが、とても元気でそうは見えません。
お金のことを聞くのはとても失礼ですが、意を決して気になる疑問を聞いてみました。
「もちろんチップはありますが、どうしてミュージックチャージを取らないのですか?」
グロリアさんは一枚の紙をくださいました。
これは会員についての案内でした。 年間100ドルで、ここLighthouse cafeの食事の割引が受けられ、ミュージシャンへの謝礼などに使われるというものでした。
なんという素晴らしい制度でしょうか。 こういう制度があるということは音楽ファン、そしてなによりもここLighthouse cafeのファンである人が、愛する音楽をジャズを発展させてきた伝統を守っていきたいという想いがあるということではないでしょうか。