Jakob Bro Trio @Jazztreffen2015 Report
#3 And They All Came Marching Out of the Woods
MCではマイクトラブルもあり、会場は一瞬にして先ほどの緊張感から解き放たれた。
Broは日本語の挨拶を交えるなど、一転して和やかなムード。
続いてもECMの作品から。今のところ収録と曲順も一緒だ。ベースイントロで始まり、気怠くブルージーな4beatに。Broはボトルネックを手にし、比較的深く歪ませた音色でプレイする。
音遣いはかなりアウトサイドなものだが、絶妙なバランス感覚とタイム感でまとめあげる手腕には舌を巻いた。レガートで駆け上がるフレーズは音色も相俟ってか、Kurt Rosenwinkelからの影響も伺える。
後半はかなりフリーなプレイ。リングモジュレーターやピッチベンド、フィードバックなどを駆使し、非ジャズ的な空間を構築していく。
#4 Northern Blues
続いてはNY三部作の一枚「Time」より。
音源ではテーマをLee Konitzが吹いていたが、ギタートリオでも世界観の素晴らしさは損なわれていない…どころか、私は今回のバージョンの方が好みだ。
荘厳なテーマから一転してベースソロではかなりのスペースを取り、ドローンのようにフィードバックを鳴らし続けていた。
#5 Lateef
Northern Bluesのベースソロは徐々に熱を帯び出していき、流れるようにリフへ繋がる。
中東風のテーマを持った楽曲はこれまでと比較しても色温度の高い曲調で、一転して景色が変わった。
Broのプレイを間近で観て感じたのは、音の飲み方が非常に上手く、管楽器のように有機的なグルーヴを内包していることだった。
#6 Motion
終始ルバートのまま進行していくギタートリオならではのスペースを活かした空間美。
瞬間的なリックでは語ることが出来ないBroのプレイだが、こういったコンセプトは彼の真髄。
伸縮自在に変化する風景に幾つもの美しい瞬間が点在し、明滅する。
幻想的な照明の中で何を思うでもなく、次々と形を変えていく音楽に身を委ねる心地よさに暫し酔いしれてしまう。
#7 Evening Song
NY三部作「Balladeering」より。シンプルなメロディーが反復し、展開していく。
色彩豊かに筆を運ぶドラムとの対比が美しい。
Broの楽曲において最も特徴的な点は、演奏者に自由で多大なスペースが与えられることだと思う。楽曲の持つカラーを淡くすることで、演奏者独自のカラーリングが映えるようになっているのだ。
#8 Oktober
ECM作品からの選曲。マイナーのバラード。透明感がありながらも少しくすんだ空間系のサウンドが非常にマッチしている。Broはここでは一転してインラインなソロを見せる。テーマの持つ美しさを壊さぬように丁寧に紡がれるライン。呼応するように色付くアンサンブル。重力から解かれたかのような浮遊感に気付けばメモを取ることも忘れて食い入るように見つめてしまう私。笑