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The Distance Between Zero And One vol.2


このコラムのタイトルの意味を直訳すると「0と1の間の距離」ですが、私がこのタイトルを一から考えたわけではなく、あるバンドが発表したアルバムのタイトルから引用しています。

 

そのバンドの名前はNerve(ナーヴ) そしてバンドリーダーの名前はJojo Mayer(ジョジョ・メイヤー) 私が大好きなドラマーの一人です。

Nerveが発表したセカンドアルバムのタイトルが『The Distance Between Zero And One』なのですが、このタイトルには彼らが作り出す音楽の方向性が集約されているように思われます。

 

実はJojoもTED conferenceでスピーチを行っています。

Jojoはこのスピーチで電子音楽と生演奏の表現について、そして『The Distance Between Zero And One』についてこう語っています。

“エレクトロニック・ミュージックを製作する際、コンピュータやドラムマシンを使ってさまざまな表現を音楽に盛り込むことができるけれども、その表現方法はYesかNo、デジタルな言い方をするとゼロかイチでしかない。そして実際の生演奏、特に即興演奏ではその表現の意思決定をほんの一瞬でしなければいけないし、その一瞬は演奏者の意思よりも直感に支配されている。その瞬間はコンピュータが表現できなかったYesかNoの向こう側であり、ゼロとイチの間の領域を表現することである。その領域こそが人間の創造性や存在意義なのだと考えています。”

 

こちらはNerveのライブ映像です。

バンドサウンドや質感は電子音楽でありながら、演奏は100%生演奏。しかもその演奏の多くが即興演奏です。Nerveはドラムンベースやダブステップといったジャンルの音楽を人力で再現するバンドだと思われがちですが、今や再現にとどまらず全く新しい表現の方法で彼らにしかできない音楽を作り出しています。Nerveの音楽は電子音楽と生演奏の両立が実現した、ひとつの完成系だと私は思います。

 

そして最後にどうしても皆さんにご紹介したい動画があります。

僕がこのコラムでテクノロジシャンを紹介したもうひとつの理由です。

なんとMarco TempestのマジックとJojo Mayerのドラムが共演している動画です。動画のタイトルを見る限り1986年の映像のようですが、iPodが誕生する10年以上も前からすでに彼らが共演していることに驚かされます。この事実は、ジャンルを超えてお互いの表現したい世界の共通点を共に見出していたからに違いないと思わずにはいられませんね。

 

現実と非現実。 ゼロとイチ。

この相反する事象の間を表現しているマジシャンとミュージシャン。 これからも彼らは多くの“欺き”をもって、私たちを感動させてくれることでしょう。

今回のコラムは以上です。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!





okumurajunpeiライター:奥村純平
京都府出身。小学校4年生のころ、担任の先生にドラムを教わったことからきっかけにドラムを始める。中学高校時代は吹奏楽部に所属し、大学在学時に音楽活動をスタートさせる。現在はジャズドラマーとしての活動のほか、自身が傾倒する電子音楽の活動への道も模索中。




― 連載コラム:The Distance Between Zero And One ―
・ The Distance Between Zero And One vol.1

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