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偉人追悼 [山本邦山]


今月2月10日、人間国宝である尺八奏者山本邦山が亡くなられました。享年76歳。

今日のジャズ界を背負って生きた偉人の追悼の意を込めて特集の記事を書き綴りたいと思います。

 

まずはこの曲を聞きながらこの記事を読み進めください。

銀界(1970年)より

 

山本邦山は都山流尺八の達人でありジャズに尺八を用いたパイオニア。

和楽器が西洋音楽でも十分通用する楽器であると世界に認めさせた人物であり、ピアノトリオと共に尺八を主体とした作品を作るなど現代邦楽界でも大きな功績を讃えられている人物である。

ヘレン・メリル、ゲイリー・ピーコック、ラヴィ・シャンカール、山下洋輔、原信夫シャープス・アンド・フラッツ、前田憲男らと共演。

2002年重要無形文化財保持者 (人間国宝)に認定。

 

尺八は江戸時代 禅宗の一派である普化宗の虚無僧が念仏の代わりに尺八を吹き全国を行脚していた歴史を持つ。時代は明治へ変わり太政官布告により江戸幕府と深いつながりのあった普化宗は解体。尺八を吹く事も一時は禁止となったが、宗教から離れ純粋な楽器として見直された事により現代も演奏され続けている。

ちなみに尺八は和楽器と大きく括ってしまいがちだが、雅楽で使われる事はない。

 

いくつかある尺八の流派の中でも山本邦山の流派の “都山(とざん)流”は他の流派と比べ、弓を射るように力強く表現するのが特徴である。集中した細い線、荒々しい息遣いに侘・寂が表現されていて実に情緒的で器楽面から見ても尺八の可能性を最大限に活かした流派に思える。

同流派、都山流の大師範 大由鬼山もジャズ界で活躍する尺八奏者の一人だ。

 

 

本来は5音階しか出ないものが一般的な尺八であるが、山本邦山は西洋楽器と同じ音階を吹きアドリブソロも縦横無尽に演奏。東洋の民族楽器とは思えない程の高いレベルの演奏技術でその存在を世界に知らしめた。

 

1967年、ニューポートジャズフェスティバルに出演した原信夫シャープス・アンド・フラッツのコンサートで山本邦山がゲスト出演し尺八でジャズをやるという鮮烈な印象を世界に与えた。その時の演奏は音源化されコロンビアレコードから発売されている。

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ニューポートジャズフェスティバルのコンサートでは尺八をゲストに迎え大半の曲を日本の童謡・民謡から選曲し演奏した。

このコンサートをきっかけに日本古来の音楽と尺八、そしてジャズとの親和性を大きく海外の人達に印象付かせた。海外からは初めて耳にする尺八の音色をBamboo Fluteと呼び、今ではその言葉も定着している。

同年、琵琶と尺八をオーケストラに加えた武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」の初演と時が重なり海外に現代邦楽を知らしめるきっかけとなった。

 ニューポートのシャープス・アンド・フラッツ(1967年)

 

その後山本邦山は日本のトップミュージシャンと共演、音源の制作を行なう。

そのうちのひとつが冒頭で紹介した動画の曲が収録されている『銀界』だ。

菊池雅章(p)ゲイリー・ピーコック(b)村上寛(dr)と、ジャズでいう一般的なピアノトリオをバックに尺八の主たる楽曲を演奏している。岩に染み入るような冷たく研ぎ澄まされた尺八の音世界にプーさん(菊池雅章)率いるピアノトリオがより一層の深みを与え、邦楽でもありジャズでもある、真の融合をした作品に仕上がっている。

この作品から現代邦楽の新しい扉が開かれたと話を聞けば納得出来る程の素晴らしい作品だ。

この作品は入手困難ではあるがCD化もされているので是非一度聞いてほしい。

 

次のページでは山本邦山が共演した世界的アーティスト「ニューヨークのため息」「ノラ・ジョーンズの実父」と、山本邦山の晩年について綴ります。

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